介護報酬減額の政府方針固まる。介護保険利用者、サービス事業者への影響は
政府は2014年12月15日、
介護サービスを提供する事業者に支払われる介護報酬について、2015年度の改定で引き下げる方針を固めました。
現在も財務省と厚生労働省との間で引き下げ幅についての調整が進められていますが、
減額率については2%から3%の間に落ち着きそうな見通しとの報道がなされています。
※当初6%の引き下げと言われていました
膨れ上がる一方の社会保障費削減の一環として、
介護給付費についての減額が議論されてきました。
介護報酬については、1%減額がなされると、全体の支出はおよそ1000億円減ると言われており、
同時に、支出が減ることで、現在、5000円前後となっている介護保険料自体を引き下げる効果も見込めます。
しかしその一方で、介護事業を運営する事業者側からすると、得られる報酬(収入)が減ることとなり、
職員への賃金などへの影響が出る可能性もあります。
厚生労働省では、人材難が続く介護職員の確保をより確実なものとするために、
ただでさえ低いと言われている介護職員の給与条件(全産業平均約32万円のところ、介護職員の平均賃金は24万円)を引き上げるべく、今回の介護報酬引き下げについては、職員の賃上げについては除くとしていますが、
トータルで見た場合の介護報酬の減額が、運営する事業者側に最終的にどれくらいの影響を与えるものになるのか、
そしてそれが介護職員の賃金アップを確保できるものに落ち着くのか、現段階では不透明です。
そもそも、介護報酬について引き下げが求められたのは、
特別養護老人ホームやデイサービスなどの一部の介護事業者の利益率(※収支差率)が、平均で8%と、
一般の中小企業の利益率2.2%を大きく上回っていることが問題だという指摘があってのこと。
今回の引き下げについても、利益率の高いサービスを中心に行い、
全体としてはマイナスになるような改定を行うとのことですが、
職員一人あたり月額1万円程度とされる職員給与の引き上げについては条件付きのところもあり、
政府の目論見通りの結果が導かれるかどうかについては予断を許しません。
高齢化社会を見据えた、制度維持のための改革は必要ですが、
財政削減だけが優先され、それがもとで本来受けられるべき介護サービスが受けられなくなったり、
介護職員の待遇が悪くなったりするようでは本末転倒です。
介護報酬の改定については、年明け早々、1月半ばに予定されている予算編成を経て正式に決定されます。
介護保険は、1/2が国と自治体、残り1/2を40歳以上の被保険者が支払う保険料でまかなわれています。
2025年にはの介護保険制度自体が正常に機能するか不透明な部分もあります。
現在は介護保険サービスを利用するには、
年収などにかかわらず1割を利用者が負担していますが、
改正後は一部の利用者の負担が増えることになりました。
2015年8月から、年金収入280万円以上の人は自己負担が2割になります。
「年金収入280万円以上」となるのは、モデル年金や平均的消費支出の水準を上回り、
被保険者の上位20%に該当する層にあたります。
厚生労働省は
・在宅サービス利用者の約15%、
・特別養護老人ホームの入居者で約5%
が2割負担になるとみています。
介護サービスは要介護度ごとに、1カ月の1割負担で利用できる上限額が決まっています。
例えば、要介護5なら約36万円。
1割尾負担で換算すると1ヶ月約3万6,000円です。
そうなると年金収入額が少なかったり、夫婦で介護サービスを利用していると、
家計の負担が重くなることも考えられます。
こうしたときに役に立つのが「高額介護サービス費」です。
医療保険における「高額療養費制度」同様、
所得に応じて1カ月の自己負担限度額が決まっていて、
それを超えると払い戻される仕組みになっています。
改正案では、この自己負担限度額が引き上げられる予定です。
65歳以上の高齢者が支払う介護保険料は市町村によって基準額が異なりますが、
全国平均で月額4,972円です。
所得が低い人は段階的に保険料が軽減される仕組みになっています。
この軽減率が2015年4月から拡大されます。
軽減の対象になる人は、世帯全員の市町村民税が非課税か、
本人が非課税であることが前提です。