高齢ドライバーが免許を返納しても暮らしやすい社会作りに
高齢ドライバーの事故が後を絶たないなか、国は認知症検査の強化や免許の自主返納を呼びかけています。
しかし、車が生活の一部として欠かせない地域では、免許を自主返納することで生活の行動の制約につながります。
高齢者は難しい決断を迫られることになり、家族や周囲の助言も必要となってきます。
そもそも高齢になると事故を起こしやすいのは何故なのでしょうか。
高齢者が事故を起こしやすい原因に複数のものに注意を向けるのが苦手になるということがひとつに挙げられます。
特に事故が起こりやすい交差点では、対向車や歩行者などに注意を向け、素早い正確な判断をしなければなりません。
しかし、高齢者は複数の物事に対する判断に時間がかかるため、歩行者に気を取られているうちに対向車への判断が遅れ対向車に気が付かず衝突する、もしくは対向車に気を取られ歩行者への衝突するなどの事故を起こすケースが多い傾向にあります。
この「判断が遅れる」原因としては、脳の一部の血流が悪くなってできる「白質病変」が考えられています。
高知工科大学地域交通医学研究室の調べによると、白質病変が脳の両側にある人は、ない人に比べて事故を起こす割合が1.6倍高くなっており、さらに交差点での事故に限るとその差は3.4倍にも広がるそうです。
白質病変は、軽度なものだと加齢により誰でも少しは出現しますが、重度になると、認知機能の低下といった症状が生じ、認知症の原因にもなると言われています。
他にも、老化現象がもっとも早く訪れる「目」の視野が狭くなることや、長年の経験から交通規則よりも自分の経験即を重視してしまうというような運転能力に関する過信も高齢者の事故と深く関わっているとのことです。
免許を返納したあとの生活をサポートしていくには
2015年に成立した改正道交法では、免許更新時の検査で認知症の恐れがある75歳以上の人は医師の診察を受けるように義務付けられています。
受診をして認知症と診断されれば、免許は停止か取り消しになります。
しかし認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)である場合、運転の継続を自分で判断することになります。
免許を返納した場合、身分証明に使える運転経歴証明書を受け取ることができ、自治体によっては、バスやタクシー料金、買い物の割引などさまざまな特典を用意しているところもあります。
また、自治体以外でも東村山市のバス会社「銀河鉄道」では、運転免許を自主返納した高齢者に同社の路線バスを1年間利用できるパスを1年分無料で進呈するサービスを始めており、免許を返納した高齢者を支援する動きは始まっています。
高齢ドライバーが激増している社会において、免許の返納は現実的なものになってきていると考えられます。
しかし高齢者にとって、今まで運転していた車の運転ができなくなることは、日常生活の不便さの問題だけではなく、自己の尊厳を傷つけられることにもつながりかねません。
そのため、返納についての話し合いは高齢者が納得できるよう慎重に行い、返納後のフォローやサポートをすることが大切です。
車の運転を断念し免許を返納すると決断したときに、安心してその後の生活を送っていける社会を作ることが必要とされています。
出展 詳しくは、こちらから→介護パド